主張 |
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小選挙区制は二党独裁制である |
小選挙区制は民意を反映しない。選挙区の中で1名しか当選しない。小選挙区制のもとでは少数政党は到底選挙に勝てず、少数派への投票は、ほとんど「死票」となる。選挙を重ねていくとやがては、二大政党とならざるを得ない。そして、そうなればますます二大政党のどちらかでないと勝てない。そうすると、国民としては二大政党のどちらかしか選択肢がなくなり、多様な国民の意思が反映されないことになる。極端な言い方をすれば、それは「二党独裁制」に等しい制度である。民意を反映していない以上、「国会の多数」は茶番にも等しい。
私が不思議に思うのは、米ソ対立の冷戦時に、ソ連などの社会主義国家に対して、「一党独裁制で民主主義でない」と批判したいわゆる保守派文化人の沈黙である。
確かに、社会主義国家には「選挙制度」はあったものの、共産党候補を信任するか否かの選択肢しかなく、まさしく「一党独裁制」と呼ぶべきものであった。その批判は正しい。
しかし、選挙の対象が、(実質)「二党しかない」のであれば(社会主義国家の場合は、それが「一党」であったことから「一党独裁制」と呼んだように)それは、「二党独裁制」と呼ぶべきものであろう。そこには、「民主主義」はない。
小選挙区制が民意を反映しない事は、これまでも指摘されてきたが、2005年9月11日に行われた第44回総選挙は極めてわかりやすい形でその事実を示した。それは数字を挙げると明らかである。
小選挙区300議席中の獲得議席数、その獲得率、実際の得票率を並べると次の通りである(5党のみ示し他の政党は省略)。
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自民 |
民主 |
公明 |
共産 |
社民 |
獲得議席数 |
219 |
52 |
8 |
0 |
1 |
獲得率 |
73% |
17.3% |
2.7% |
0% |
0.3% |
実際の得票率 |
47.8% |
36.4% |
1.4% |
7.3% |
1.5% |
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実に自民党は47.8%の得票率で73%の議席を獲得し、逆に、民主党は36.4%の得票率がありながら、17.3%の議席しかない。
共産党は7.3%の得票率がありながら議席はゼロである。
一方比例区の得票率は、次の通りである。 |
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自民 |
民主 |
公明 |
共産 |
社民 |
38.2% |
31.0% |
13.3% |
7.3% |
5.5% |
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小選挙区の得票率よりも、選択肢の多い分だけ民意を反映しているといえる。
衆議院議席数の480(選挙区300、比例区180)をこの比例区における得票率で割り振るとあるべき議席数は、 |
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自民 |
民主 |
公明 |
共産 |
社民 |
183 |
148 |
63 |
35 |
26 |
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となる。
しかるに、現実の獲得議席数は、 |
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自民 |
民主 |
公明 |
共産 |
社民 |
296 |
113 |
31 |
9 |
7 |
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であり、自民党は本来の(比例区に見られる)得票率からすれば183議席のところ、何と296議席も獲得している。
この増えた113議席は、「小選挙区制」というイカサマ制度によるものであり、民意からはずれてインチキでかすめとったものといえよう。
では、現行のブロック制比例区は民意を反映しているか。
前記同様、比例区の得票率で比例区議席数180議席を配分した数と、実際の議席数を比べると次の通りとなる。 |
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自民 |
民主 |
公明 |
共産 |
社民 |
あるべき議席数 |
68 |
56 |
23 |
13 |
9 |
実際の議席数 |
77 |
61 |
23 |
9 |
6 |
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自民党と、民主党が取りすぎである事がわかる。
比例区といっても全国11ブロック制である為、全国的に広範囲に渡って候補者を出せる大政党が強く、全国で候補者を出す事の出来ない小政党の場合候補者が少ない(或いはいない)為に、死票になるといういわば「小選挙区効果」が生じているのである。小選挙区で、議席数を余分にとられてしまった民主党もここでは「5議席」余分にとっている。
つまり比例区も「ブロック制」では完全に民意を反映しないのである。
さて、以上の不合理はマスコミでも報道された(2005年9月26日朝日新聞「天声人語」、世界2005年11月号上脇博之「これはほんとうに民意なのか」他)。
いわく「自民党は47.8%の得票率で、73%の議席数」いわく「自・公は合わせて49.2%の得票率で、75.7%の議席数」というわけである。
確かにこれだけでも大きな問題である。
しかし、小選挙区制の本質的な問題はこれだけではない。
つまり、これまでに述べてきた事は、あくまで投票において「候補者に得票した民意」と「現実の議席数」の矛盾にすぎない。
小選挙区制のより本質的な問題は投票以前の問題である。即ち、「候補」段階で民意が反映されていない事である。
公示後投票前の世論調査で「甲が優勢、それを追って乙が猛追、丙は支持層をまとめつつある。丁以下は、独自の闘い」と報道されれば、普通は死票をさける為に甲か乙へと投票心理が働くであろう。
そうでなくとも小選挙区制は、相対多数をとりうる1位、2位の政党しか勝ち目はなく何回かの選挙を重ねるうちに「大政党」しか候補者を出せなくなる。
すると「候補」段階で、「2大政党」しか候補が出ない(仮に出ても泡抹候補である)となろう。具体名でいえば「自民党」か「民主党」である。
そうするとまさに「候補」段階で選択肢が、極めて限られ、民意はこの段階で反映されないのである。
そうするとマスコミが書いた「自民党は47.8%の得票率で73%の議席数」というのは全く本質をついていないといえる。
「47.8%」は選択肢が限られた中での得票率だからであり、真の民意・支持率ではないからである。
ブロック制比例区も民意を反映しないことは先述の通りだが、これを前提としても、正しくは、「自民党は38.2%以下の支持率で、73%の議席数」というべきなのである。
こういう茶番を許している限り、日本が民主主義国家であるなどとは、およそ恥ずかしくて云えないであろう。 |
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