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小選挙区制の根拠   松井茂記教授への疑問
 松井茂記大阪大学名誉教授とは大学時代からの友人で有り、私が尊敬する学者の一人である。同教授の論には教えられところも多い。
 しかしながら、憲法15条が小選挙区制度を要請している、という同教授の説にはいささか疑問を覚える(松井茂記「日本国憲法」第3版・有斐閣)。
 同教授は次のようにいう。
 「憲法の代表民主制の建前では、国会議員は選挙民の意思に拘束されることなく、公益と考えるものを実現するために行動すべきである。従って、選挙民に国会議員のリコールを認めることは適切ではない。しかし、他方で国会議員は選挙民の意思を全く無視してもかまわないということはできない。国民に公務員を罷免する権利が保障されている以上、国民にはせめて次の選挙の時にその国会議員の行動を評価し、再選を拒むことは認められなければならない。つまり選挙民には、国会議員を落選させる権利が保障されるべきである。それゆえ、15条は選挙区で1人の議員が選出される小選挙区制度を要請していると考えるべきであり、そのような権利を否定する大選挙区制や比例代表制は憲法に反するものと考えるべきである。」(同著410頁)
 これはとうてい賛成出来ない。
 憲法15条の公務員罷免権は、その由来、その他、色々な学説や考え方がある。仮に、同条が何らかの意味で「公務員」をやめさせることが出来る権利としても、それは、明らかに「駄目な公務員」を止めさせる権利であろう。即ち、国民にとって、有害な公務員、役に立たない公務員を辞めさせる権利である。
 公務員に順位を付けることは、実際には無理ではあるが、仮に順位を付けることが出来たならば、かなり下位に属する公務員を辞めさせる権利であろう。即ち、ナンバー2の優秀な公務員を辞めさせる権利ではとうていない。
 一方、小選挙区制とは何か。小選挙区制が民意を反映しないというその問題点は色々と指摘されているのでここでは繰りかえさないが、結論から言えば民意を反映するという点では比例代表制ないし大選挙区制の方が民主主義にふさわしく、憲法にかなう制度であり、小選挙区制度はその逆と言える。
 問題は、小選挙区制では、ナンバー1とナンバー2しか実際には有力候補として立てず、ナンバー3以下はそもそも勝負にならずその多くは「不戦敗」であるということである。
 確かに小選挙区制はナンバー2以下を落とすことになる制度である。
 しかし前述の通り、憲法15条は、ナンバー2を落とす制度ではない。
 松井教授は、「選挙民には、国会議員を落選させる権利が保障されるべきである。」とも言う。
 しかし次のような例を考えてみればこの考えが誤りであることは明らかである。
 現役A議員が余りにも問題があるゆえに、このA議員を辞めさせたい選挙民が70%いるとする。しかし、政治観、価値観が多様化している以上、現実の投票行動は対立候補一人に集中するわけではない。そこで投票の結果、A候補30%、B候補27%、C候補23%、D候補20%とすると、70%もの選挙民がA候補を辞めさせたいと思っているにも関わらず、現実にはAは当選してしまう。この場合、小選挙区制ならAただ一人の当選である。中選挙区制(3人区)でもAは当選するが、B,Cも当選し、辞めさせたいAの影響力は「相対的に」低下する。これが、大選挙区制、比例代表制になればなるほど、Aの影響力は低下する。大選挙区制、比例代表制ほど民意を反映するのであるから当たり前の話である。
 憲法15条が、小選挙区制度を要請しているというのは余りにも無理があるといわざるをえない。
 松井教授の説に疑問を覚える次第である。
 
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