大川法律事務所
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大阪刑務所視察委員会
1. 施設の概要
   大阪刑務所は、法務省矯正局の大阪矯正管区に属し、府中刑務所に次ぐ収容能力を持ち、西日本では最大規模の刑務所である。堺拘置所、岸和田拘置所、丸の内拘置支所、田辺拘置支所、新宮拘置支所を併せて所管している。
 大阪刑務所の施設規模は、敷地面積は186,433㎡(施設敷地面積155,677㎡・宿舎敷地面積30,756㎡)、収容定員は2,703人である。そして、実際の収容者数はピーク時の2006年には3,039名と過剰状態であったが、その後、減少を続け2011年12月現在2,600名弱となっている。収容分類級はB、Fである。即ち、主たる収容対象者は、犯罪傾向の進んだB指標の成人男子受刑者と、日本人と異なる処遇を必要とする男子外国人受刑者である。
 また、大阪管内(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)の拘置所等で刑が確定した26歳未満の男子受刑者のうち、受刑歴のない執行刑期1年6月以上の受刑者及び生命犯など重大な犯罪を犯し、特に調査を必要とする受刑者を、いったん大阪刑務所の調査センターに収容している。
 組織としては、所長の下に総務部(庶務・会計・用度)、処遇部(処遇・作業)、教育部(教育・厚生)、医務部(医療・保健)、分類審議室(考査・審査・保護)、国際対策室の4部2室を置く6部制の施設である。
2. 処遇概要
   受刑者の1日はおよそ以下の通りである。
 起床は、朝6時40分(休日は朝7時10分)、就寝は夜9時。朝食と夕食は居室内で、昼食は工場の食堂等で摂る。
 基本的に月曜日から金曜日の間、各日8時間、所内の工場等で作業に従事する(月2回は、作業ではなく各種指導を実施する)。
 運動は、毎日1回30分間実施、入浴は、夏期(7月~9月)は週3回、それ以外の期間は週2回実施である。
 懲役受刑者の義務である作業は、処遇審査会で本人の適性を審査して決定される。
 作業の種類は、金属、木工、印刷、洋裁などの生産作業(物品を製作する作業など)と刑事施設内の生活のための炊事、洗濯、営繕等の自営作業に大きく分けられる。大阪刑務所では、29の生産工場と自営作業の工場などのグループに分かれて受刑者は作業に従事している。大阪刑務所の作業のうち、工芸科(織布)―堺式手織緞通は、堺の伝統工芸を守るものとして有名であり、出来上がった作品は実に見事である。
 改善指導は、受刑者に犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培い社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を修得させるためのものとして実施される。
 大きく分けて、一般改善指導と、更に特別な事情を有することにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められた受刑者を対象に実施する特別改善指導に分けられる。具体的には以下の通りである。
 
(1)
一般改善指導
  ① 行動適正化指導
② 自己啓発指導
③ 社会復帰支援指導(中学校通信教育課程、簿記教育、珠算教育)等
(2) 特別改善指導
  ① 薬物依存離脱指導
② 暴力団離脱指導
③ 性犯罪再犯防止指導
④ 被害者の視点を取り入れた教育
⑤ 就労支援指導
   見学した印象では、専門家により熱心に取り組まれているが、一回の指導が少人数対象であることから、受刑者数の多さを考えたときに、指導がいきわたるかが課題であろう。
3. 視察委員会の活動
 
(1)
委員の構成。
   大阪刑務所視察委員会は9名で構成している。委員の構成(推薦団体)は以下の通りである。弁護士、医師、大学教授、司法書士、学校長、自治連合会、堺市人権部長、民生児童委員会長、社会福祉協議会。
(2) 視察委員会の活動として2010年度を例にとれば以下の通りである。
  ①委員会開催 年間8回開催している。
②施設視察  当所内及び丸の内拘置支所の2ヶ所を視察した。
③研究授業視察  薬物依存離脱指導を見学した。
④職員との座談会 1度行った。
⑤受刑者との面談(本人申し込みによる面談)3回に渡り計12名面談した。
⑥意見提案箱の開函等  提案件数443件、信書9件(但し一部次年度持ち越し)
⑦ニュースの発行 受刑者向けニュースを年2回発行した。
⑧2010年には、熱中症死、自殺等が生じたことから、その対策をとるようになど意見をあげた
 (詳細は法務省ホームページ参照)。
(3) 視察委員会の活動に対しては、施設側は庶務課を中心に協力的であり、委員会としては大変感謝している。
(4) 委員会に関する昨今の問題点としては、受刑者からの提案件数の激減がある。前年約400件に比して2011年は約100件と減少したが、理由は不明である。
4. 大阪刑務所における事件
   被収容者数が多いことも影響しているのかもしれないが、比較的事件は多い。 
大阪刑務所では、2007年、2010年と相次いで受刑者が熱中症で死亡するという事故が発生した。特に2010年度の事案は、密閉された保護房内で、しかも朝食以降、必要な水分補給がなされていたかどうかなど調査が必要な事案である。
また、大阪刑務所では残念ながら従前から自殺が生じており、2010年においても生じている。自殺対策としては、単に、監視体制を強めるというのではなく、そもそも受刑者が「自殺願望」を抱かないようにする必要がある。即ち、真に更生意欲を抱かせる処遇でなければならないだろう。
また2011年にはマスコミをにぎわす食中毒事件も生じたが、これは大事に至らずすんでいる。
心打たれる出来事としては、2011年の東日本大震災のあと、受刑者からの義捐金が相次いだことであろう。収容生活の中で、何かが義捐金活動へと突き動かしたのであろう。
5. 大阪弁護士会からの勧告
   大阪弁護士会人権擁護委員会からの大阪刑務所に対する勧告も多い。毎年何件かの勧告がある。内容は、医療、運動、その他広範囲に及んでいる。
大阪弁護士会からの勧告に対して、施設側が全てに改善するわけではないが、勧告に応じられない場合は、その理由を視察委員会へ説明するなど真摯に対応はしてもらっている。
6. 運動
   受刑者の運動に対する不満も多い。2010年は受刑者から大量に提案があったが、施設の側でも、単独運動場を増設するなどして、改善の努力はされている。
7. 食事
   食事は,カロリー,標準栄養量,嗜好傾向等に配慮しつつ,給食委員会で献立が決定される。主食は,米・麦が7対3の混合となっている。宗教食などにも配慮している。パンは施設内で作っており、年に一度の市民向け矯正展では人気メニューとなっている。
 量、カロリー、内容などにつき個別の提案が多くなされるが、収容人数の多さからも無理な場合も多い。
8. 医療
   医療について、十分な医療がされているのか、あるいはどういう治療・投薬なのか知らせよ、という提案は毎年多い。
適切な医療を受けることはもちろん、カルテ開示、治療薬開示など、被収容者の診療情報を受ける権利が守られるようにすることは重要である。自己の治療についての診療情報を知る権利は、一般市民と受刑者で区別する理由はどこにもない。
被収容者数に比しての医療スタッフの負担は十分理解するにしても更に適切に運営されることが必要である。
9. 職員の言動
   受刑者から、職員の「言葉使い」を問題にされることも多い。
大阪刑務所においては、ときには制圧を伴う厳しい場面にも遭遇することを思えば、受刑者に対してことさらに丁寧にする必要は無いであろう。しかし新法の精神に則り、真に受刑者を更生に資するように接するならば、自ずとその言葉使いは限られるであろう。職員の言葉使いにおいて、ことさらに受刑者の人格を否定するようなことの無いように努めることは重要であるといえよう。
10. まとめ
   新法施行後、収容の目的が変わり、大阪刑務所においても新法の趣旨に則って改善の努力がはかられている。しかし、収容者数の多さに比して、予算、職員数は不十分なものと思われる。
こういったことが今後の課題であろう。
 
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