大川法律事務所
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1. 今回の改定にいたるまでの背景
   最初に簡単に、今回の労働法制の改定がどういう流れで出てきたかを説明します。労働法、あるいは労働法制ができる前には、もともと民法を中心とした市民法の法体系しかありませんでした。そうしますと、いわゆる自由主義、雇うのも首を切るのも自由、労働条件をどうするかも自由、そういう中では、当然力関係は雇う方が強いわけですから、労働者の側が譲歩せざるを得なくなります。そうすると労働条件の切り下げ競争になっていくわけで、限りなく労働時間は増え、逆に給料の方は増えない。非常に労働条件が過酷になり、果ては失業とか貧困とか、企業の自由が同時に公害などを生んでいきます。こういう歴史はご存知だと思います。そこで労働者が団結し、権利を勝ち取り、企業の自由に規制をはめていく中から、労働法制というのは出てきたわけです。
 労働法制ができあがったところ、七〇年代にオイルショックを受けて、全体的には資本主義経済が危機的な状況に陥ります。そこで登場してきたのがいわゆる新自由主義という考え方です。具体的にはイギリスのサッチャー首相であるとか、アメリカのレーガン大統領が唱えました。企業の自由を新しく回復させる、言い換えればそれまで「足かせ」になっていた色んな規制を取払って、もう一度自由に企業を競争させる、そのことによって企業が活力を増し、経済も回復する。大雑把にいうとこういう考え方ですね。その規制緩和の思想が、まさに八〇年代半ばから現在までの労働法制の改定を後押ししています。
  具体的には、八五年に労働者派遣法が成立します。中曽根構造改革の一環という意味で、極めて象徴的なスタートですね。八七年には変形労働時間制を成立させました。「時短」と合わせて、変形労働時間制が、当時は労働時間の弾力化と言われましたが、導入されました。時間を短くする、しかしその代わり企業にとって、忙しいとき、そうでないとき、労働者に働いてほしい時、休んでほしい時、いろいろあるわけだから、その辺は柔軟に見てほしい、このような経営側の要望によって弾力化が導入されました。この変形労働時間制の成立のときに、裁量労働制度も創設されています。こういう弾力化というのは労働者にとっては大変なことで、人間というのは、今日一食、明日五食、平均すると三食だから大丈夫と、こういうわけにはいきません。毎日三食食べる、毎日八時間働くというのが、健康のためにも必要なわけです。機械じゃないので、平均したら八時間というのが、いかに労働者にとってはつらいものであるかというのはご想像できると思います。
  それから八九年には民事保全法が改定されました。労働者がクビになったときに仮処分という比較的迅速な方式で仮に地位を認めるよう、裁判所に結論を求める制度があるんですが、その労働仮処分が大阪ではかなり本案裁判に近い形で比較的柔軟な取扱いがされていました。この民事保全法の改定で、大阪の柔軟な取扱いが全国一律、東京地裁のようになっていく、一つのきっかけになりました。
  九五年には日経連が「新時代の日本的経営」というのを提唱しております。この中でストレートに規制緩和を打ち出し、いわゆる日本型の終身雇用というものに対する破壊が本格的に始まりました。九七年には、男女雇用機会均等法の改定とセットで、例えば女子の深夜業禁止など保護規定を撤廃するなどということも行われていきます。九八年は、八五年から八七年の改定に続く大きな、第二段の改定ともいうべき労働法の改定時期で、派遣法・労基法が変わる、裁量労働制がまた別の形で成立します。この時期は裁判所の方でも東京地裁で悪い判決が続きます。将来の労働法制の改悪を先取りするかのような、解雇は自由であるということをわざわざ判決の中で唄うとかですね。同じく九九年から今年の担保執行法改正等までの間ですね、いわゆる企業再編にからむ法体系の整備もされています。ここから、将来企業再編とともに労働者の大量解雇ということが予想されます。そこへ今年の労基法改定がなされたという状況にあります。
2. 有期雇用について
   そこで今回の改定の内容ですが、まず労働基準法について見ると、(1)有期雇用、(2)「解雇ルール」、(3)裁量労働と、大きく三つの問題があります。一つ目は有期労働の問題です。民法は有期の上限を五年と定めていてそれを超える場合は期間の定めが無いというようにみなします。民法の自由にまかせておくと、五年間は労働者の側からすれば人身拘束のような状態におかれます。逆に期間の定めがない場合は経営側がいつでもクビを切れるという、そんな状態にも置かれているわけです。そこで労働法が修正し、有期雇用の期間については人身拘束につながりかねないので短い方がいいということで一年。それから期限の定めの無い場合は市民法レベルでしたら、いつでも首切り自由になりますが、それについて労働基準法は、一応の解雇規制の法文を設けるとともに、判例の中で解雇について規制してきたわけです。問題はこの期間ですけども、労働法が一年と考えているのを、九八年に、一定の業務に限って上限を三年に変更しました。このときは、例えば企業が新たに何かの開発のためのプロジェクトを作るために、研究・開発に必要な「高度の専門的知識を有する労働者」を雇いたい場合に限り、経営側の要求もあって三年に変更したのです。
  これからわずか五年で今回どのように改定したかというと、上限期間を原則一年から三年にあげました。加えて三年の特例をいれた、専門的知識を有する労働者については上限を五年にしました。言うまでも無く企業からすればこういう便利なことはない。この改定時に労働側からは、特に臨時とかパートとかで、六ヵ月とか一年とかで雇われている人にとって、有期の期間が延びるのはその分地位が安定していいんじゃないか、そういう考えを言う人もいました。しかし、経営側にとってまさに雇用の調節・安全弁にしているようなところは決して上限の三年まで延ばすことはありません。あくまで企業の都合で期間を決めるわけですから、六ヵ月とか一年だとか期間が短くていつも反復更新されて不安定だった人が三年に延びる、というのはあまりにもいいように考えすぎです。この有期労働というのは使う側からすれば期間が過ぎればやめてもらえる。クビを切るというのは解雇規制があってなかなかできないが、有期労働なら期間が終われば否応なしにやめてもらうわけですから、解雇規制の脱法に使われるわけです。だから本来有期雇用というのは、もともとの労働法の発想である一年を上限にすべきで、それを超える者は期間の定め無しで常用にすべきなのです。
  しかし、こちら側の考え方はなかなか反映されません。従来は更新をいれても、そう何回も反復更新できませんから、一年一年一年の三年くらいでした。今後この上限三年のスパンでいけば、三年三年三年と三回更新するパターンとか、五年五年、二年二年とか、まさに企業の側の都合によって色んな期間で、しかも更新もできることになります。さらにこれまでの判例では、反復更新を三回から五回以上くりかえせば期間の定めのない雇用と同様の保護を受けたのですが、期間の単位が延びたために、たとえ裁判所の考え方が変わらなくても、経営側の都合のいいように期間を決められる可能性があります。非常に便利だということで経営者側は喜んでいます。
  それと、もともとの有期雇用が人身拘束の問題があるということだったので、有期労働契約の但書きのところに、有期雇用で三年と区切っても一年経過したらいつでも退職することができるという規定を入れています。もちろん憲法で強制労働は禁止されていますから、一年以内でもやめることはできますし、現実的には契約違反を理由に経営者から損害賠償を求められることもないと思います。
  また、今回の改定では、有期契約の締結・更新、あるいは更新拒絶に関する一応の規定を定めて、それには基準を設けよ、という点がありますが、例えば更新そのものについてこういう場合は拒絶できないとか法律で厳しく規制しているとかいうことではありません。
3. 「解雇ルール」の条文化をめぐって
   今回の改定で一番問題になったのは「解雇ルール」です。規制緩和の中で、さらに解雇自由というのを獲得できれば経営側にとっては一番それにこしたことはない。一方、労働側の方は明文で、つまりこれまでのような判例ではなくて法律で解雇を規制したい。経営側と労働側の主張が全く反対で非常に激論を生んだところです。そういう中で妥協点として現行の判例を法文化しようという大きな枠組みができました。しかしいくつか問題点が立法段階で起こったわけです。
  使用者の解雇権に関するこれまでの判例理論というのは、解雇権濫用法理というもので、一人一人の労働者を経営者が解雇するのに合理的な理由が無ければ権利の濫用として無効になるというものです。これに加えて、昨今の経済状況を反映した経営状況の悪化にともなう大量解雇、俗に整理解雇と言いますが、これについても条文化すべきだという意見が出てきたんです。判例の中では整理解雇の四要件という考え方が確立されてきたんですが、条文化しようというときに四要件の扱いについて考え方がまとまりませんでした。結論として、解雇権の濫用法理だけを明文化することになりました。
 また昨年の暮れぐらいには金銭解決の条文を入れようという動きもありました。しかし、金銭解決を可能にすると、解雇無効になっても一定の金銭を払えば結局は解雇できることにもつながりかねません。労働側が大反対して結局これも立法化されませんでした。
  結局残ったのは一八条の2だけで、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」という条文だけになりました。ところがこれも実は政府案の段階では原則と但書という形になっていて、原則的に使用者は労働者を解雇することができると、こう書いて但書で、今の一八条の2を例外的な形で入れていたんです。反対運動の盛り上がりでようやく今回通ったこの条文にこぎつけました。
  この解雇権濫用法理を明文化したということに伴う影響なんですが、明文化されると、本来こういう場合は無効になるという、アナウンス効果として経営者に対する一つの行為規範になる、予防機能というのは期待されると思います。それから、偽装請負や有期雇用の場合における解雇類似事態にも、この文言を明文化することによって類推適用することを可能であるようにしていかなければならないと思います。
  また、立証責任はどうなるかわかりません。立証責任とは、例えば解雇事件の裁判で労働者が解雇無効だということで、労働者側と経営者側が争うときに、立証責任を負っている方が立証できないと負けるというルールです。労働者側が立証責任を負うということであれば、その解雇が無効だということを立証できなかったら経営者側が勝ってしまう。逆ならば、その解雇に合理性があるということを経営者側が立証しないと経営者側が負けになります。この訴訟におけるルールとの関係で、立証責任がどうなるかというのは大きいですね。最初の政府案だったら、明らかに労働側が立証しなければならない。これでは大変です。それを変えさせた所に今回の解雇ルールの法案化の意味があるんですが、ただ「玉虫色」の決着と言われるように、本当に立証責任問題が解決されたのかどうか、実際のところ条文上はっきりしない。これが将来的にどう動いていくか、あるいは現在のままなのか、今後の課題として見守っていく必要があるということです。
4. 裁量労働制度の拡大
   次は裁量労働制です。変形労働時間制というのと裁量労働時間制というのは似てるんですが違います。変形労働時間制というのは今日六時間、明日一〇時間、でも平均八時間だからかまわない、こう労働時間を変形させる、ただそれは、一ヵ月単位とか一年単位とか、非常に細かくなっていくんですが、あくまで時間管理です。ところが裁量労働時間というのは、何時間働いても八時間働いたものとみなしますという、労働者の側にその労働時間の裁量をもたせるというものです。裁量といったら聞こえはいいですが、現実問題としたら一〇時間働いても八時間とみなされます。こういう意味では労働者の側にとってみたら大変で、過労死にもつながります。
 もともと八七年にスタート後、経営側は日経連を中心に裁量労働制を拡大するようにずっと研究しています。九六年に日経連が発表した中で、「近年ホワイトカラー労働者が従事する業務は高度化・専門化しているとともに、画期的な新商品・新技術を生み出していくためには、ホワイトカラーの独創的・創造的な仕事が求められる。従ってホワイトカラーの業務に関し、裁量労働制が適用できる対象業務を業務遂行の方向にかかる裁量が認められるについて大幅に拡大すべきである」ということを言っています。頭の中でいろんなことを考えて作るという労働者の場合あまり時間管理になじまない、と言う考えですね。
 実際は、裁量労働は、時間の規制を取り払うことで残業代はいらず、経費の削減になる。また請負に限りなく近づくので、今後企業が導入しようとしている成果主義の賃金体系にもよくマッチする。そうすると労働者同士が成果を求めていいように競争し、ますます働いてくれる、という点に企業のメリットがあります。企業の全体的な戦略に非常に合うんです。
 その後、裁量労働制は、九八年に本格的に成立、そして今回の改定、と三段階で導入されています。八七年から九八年の間に、日経連がいろいろ研究し、その成果として成立させたわけです。ブルーカラーは変形労働、ホワイトカラーは裁量労働、これはもう経営側の基本的な戦略ですね。
 具体的に今回の改定では、いわゆる新商品、新技術を生み出すという企画業務型のホワイトカラーの業務でかつ九八年のときには厳格な縛りを入れたところを緩めました。要するに九八年のときは、そういう企画業務は事業の中枢ですから、本社で働くホワイトカラー、それが企画業務の労働者だと、そういう事業場に限定していました。ところが本社の労働者に限らなくなったわけです。それから企画業務型裁量労働制の導入にあたって労使委員会が行う決議の要件も、従来の全員一致から五分の四の多数にまで緩めました。それから労使委員会の委員で労働者を代表する委員について、従来は当該事業場の労働者の過半数の信任を得ていることという要件があったんですが、これもなくしました。こうした緩和は、九八年に裁量労働制を入れたときに、使用者の側から不満が噴き出したからです。いろいろ要件が厳しいからなかなか使いにくい。それが今回の改定で行政官庁への届出も廃止ということで、わずか五年で緩めました。
 裁量労働というのは、自分の裁量で働けるんだからいいなと思ったら大間違いです。仕事の内容は経営者が決めるわけですから、君はこういうことを企画してくれと、しかも〆日も経営者が決めるわけですから、例えば、いついつまでに企画書を出すようにと。裁量労働だから労働者にとっていいということは全然ありえないわけです。仕事の内容と〆日は経営者に決められて、私の力では無理ですよ、と言ったらそれはもうクビですから、そんなことは到底できない。そうすると裁量労働というのも労働者の側からすれば非常に過酷な、過労死にもつながってくるんです。逆に言えば働かせる側からすれば非常に効率よく仕事してもらえるということになる。雇う側からしたら非常に便利なわけですね。
5. 労働者派遣法の改定について
   次は労働者派遣法の問題です。派遣法も、このテーマ一つだけで時間がいくらあっても足りないくらい問題が多いんです。派遣の問題というのは三面関係にあります。労働者はあくまで派遣元に雇われているんですが、実際には派遣先の事業場で働き、派遣先からいろいろ指揮命令をされます。こうやってこういう仕事をしろと指揮命令されながら、実際に給料をもらうのは派遣元からもらう。そうすると労働者にとってみたら自分の労働に関して派遣先からいろいろ指示されていながら現実に給料のことなど労働条件のことを交渉しようと思うと派遣元とやらざるをえない。派遣元と派遣先はいわゆる派遣契約という形で契約されている。こういう三面関係なんですね。ちなみに請負の場合には二面関係であって現場で注文主の指揮命令を受けません。従来はこういう形の三面関係というのは、派遣元が労働者の賃金をピンはねすることになってしまうので原則として禁止されていました。中曽根内閣のときの規制緩和で禁止というのを取っ払ったんですね。「労働相談電話一一〇番」なんかしたら、派遣労働者からすごく相談が来ます。労働条件が不明瞭、自分の雇われている地位も不安定で、いつ派遣契約が切れるかどうかわからない、待機していてもいつ仕事が回ってくるかわからない、かといって派遣先に文句を言ったら派遣契約を切られ、雇われている派遣元に言ったら次の仕事が回ってこないとか、いろんな意味で問題点が指摘されています。派遣契約について言えば、法的には解雇と異なるため契約の打切りには何の規制もありません。また労働条件について、派遣元はもちろん派遣先にも組合との団体交渉の応諾義務はあるとは思いますが、現実には派遣労働者は分断されていて団結もしにくく運動がないのが現状です。
 この派遣法というのはいろんな意味で問題が多いので、導入するときも反対運動が起きました。そのときに正規の労働者の労働を脅かすものではないと、終身雇用も含めて年功序列とか日本的な雇用慣行は守ると、そういう建前で導入されました。つまり、専門的な労働者が必要で、それを期間を区切って一時的に来てもらうのだと。その後仕事が不要になったらやめてもらう。そういう場合に限って派遣というのは役に立つ。
 労働側も正規労働者は自分の地位が脅かされないのならまあいいか、みたいな形で労働者全体の反対運動にならなかったものですから、結局ここで通りました。それでも八六年のときは、極めて専門的な分野に限るということで、派遣法という法律は作ったけれども原則的には派遣はだめと、この専門的な一六業務に限ってOKなんだと、こういう体裁をとってスタートしたわけです。ところが九七年の改定で二六業務に拡大し、さらに九九年の改定で原則と例外を逆転しました。つまり、九九年の改定のときは、原則的には派遣はOKなんだけれども、五つの部門については派遣を禁止したんです。この中でも問題になったのは物の製造の業務ですね。ここで経営側からしたら、繁閑に応じて、あるいは自分のところの計画に応じて、適宜派遣で雇ったり、あるいはまた派遣契約をやめて切ったりして、製造ラインにも派遣を入れたいんですね。ところが派遣禁止とされたものだから、実際は派遣契約ではない請負契約という形で、製造ラインに人をよこさせる、いわゆる偽装請負という形で脱法していくことが出てきたわけです。そういう背景と、やはり経営側からの圧力で、もともと問題のある派遣についてさらにまた緩和され、物の製造でも認められることになりました。今回の改定の最大の目玉ですね。
 ところで一般派遣の上限期間というのは従来は一年でした。それを三年に延長することに今回改定されました。現実の派遣の利用のされ方を見ると、三年というのはある意味で便利な期間です。三年でやめてもらう、という意味で有期雇用とよく似た背景があります。若年定年にもつながりかねないもので、一旦とりあえずやめてもらって、また別の派遣を呼ぶという形を繰り返せば、経営側にとっては非常に都合がいいんです。
 それから紹介予定派遣というのは、労働者を紹介する、気に入ったら雇ってもらえるという意味で紹介なんですが、それをあらかじめ予定して派遣すると。気に入ったらそのまま使ってちょうだいと。そういう紹介予定派遣は従来はだめと言われてたのが、今回はその位置づけを明確にすることによって一歩合法化したんです。派遣で問題にされてきたことを後追いする形で合法化した。その意味では、さらに痛感するのは違法の横行です。例えば禁止されている事前面接や、派遣労働者をある人から別の人に変える違法派遣なんか現実に非常に横行しています。違法がまかりとっている社会で、派遣労働者の権利の実現が遠いという、そんな実態の中でどんどん派遣が広がっています。もともとは常用の労働者の地位を脅かさないということで一歩認めたのが、今やもう、常用を脅かすどころか、常用にとってかわって派遣が多数を占めている所だっていっぱいある。たしかに雇う側からしたら必要なときにすぐ来てくれる派遣は助かるんですね。しかしその分派遣労働者にしわ寄せがきている。そんな状況なわけです。
6. 今回の改定の評価と今後の行方
   今回の法改定の評価と今後の行方、ということですが、労働側からすれば解雇規制の所だけやや押し戻したから一分けで、一分け三敗という内容です。いずれについても現行の規制を緩めて労働者保護を後退させたと言わざるをえない。しかし今回の改定で経営側は道半ばだと言ってます。これまでの手法をみてもらったらおわかりのとおり、制度をちょっと入れて、従来の体系を大きく変えるわけではありませんよと言いながら、その後拡大し、拡大にともなって規制があったのを緩める。二段階、三段階に分ける手法が今後も続いていくことは間違いないですね。労働基準法が四七年にできて、その大きな改定というのがほとんどされなかったのが、中曽根内閣のときにほぼ四〇年ぶりに大きく改定されたと。九八年、さらに一〇年後に改定された。そしてまだ五年しかたってないのに、今回また改定。四〇年、一〇年、五年です。次はもう数年後に経営側が改定をしかけてくるのは間違いない。逆に言えば労働側の共闘の問題、それ以外にもそもそもの規制緩和という発想に対する批判ですね、労働者側にとっては規制緩和という思想は正しいものではない、労働者側の国家観というものをもう一度組み立てる必要がある。経営側は新自由主義、規制緩和というスローガンの下に来ているのに、あるべき規制を求めるような労働側の統一したスローガンがない状況です。皆さん個々的には語っておられると思うのですが。その意味で、現状を変えるための共闘をどう作っていくかということは重要で、ぜひ皆で知恵を集めていきたいと思います。
 労働法制の行方ということで話をさせていただきました。ありがとうございました。
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