大川法律事務所
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サラ金問題について
1. はじめに
 
(1) はじめに
 多重債務者氾濫時代の今日において、各種相談窓口の回答者(相談員)にとって、多重債務問題は避けえない。
 そこで、①多重債務の解決の為の法的手続き②多重債務者を狙った詐欺、を知るとともに、③相談員としての心得を知っておく必要がある。
(2) サラ金問題の現状
 
(1) 多重債務の現状

①自殺者はここ数年約3万人でありその内、経済的生活問題を理由とするものは約8800人(後記・朝日新聞)
 個人自己破産申立件数約24万2000件
 特定調停申立件数約53万7000件
②サラ金問題・多重債務者は益々増加しつつある。
③ヤミ金被害も増えてきている。
(2) どこが問題なのか

①借りたものは返すのが当たり前。それはその通りであるが、サラ金については次の問題がある。
②サラ金3悪
a)高金利(市場金利より常に高い)(注)
b)過剰融資(必要以上に貸し付ける)
c)酷な取り立て(暴言・脅迫・果ては自殺に追い込まれる。言うまでもなく違法な取り立ては許されない)。
2. 多重債務者の解決法
 
1) 現行制度の金利について

〈3種類の法律によって分けられる3つのグループ〉
 一般の人にとってサラ金問題をわかりにくくしているのは、法律で3つのグループに分けられることである。まず、利率を定めている2つの法律がある。
 
(1) ひとつは利息制限法であり、次のように定められている。

 金銭を目的とする消費賃借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過分につき無効とする。
 元本が10万円未満の場合          年2割
 元本が10万円以上100万円未満の場合   年1割8分
 元本が100万円以上の場合         年1割5分
以上の利率を超えるものはいくら約定しても無効である。
(2) 次に出資法で貸主がをうける利率29.2%を決めている。

 これは、いくら借り主が納得してもあまり高金利であることから処罰されるということである。
 この2つの利率の間のグレーゾーンについて貸金業法は、一定の要件のもとに有効とした(但し、要件を満たしているものは少ないと考えられる)。
  表
2) サラ金問題に対する対策 ー 主な方法
 
(1) 任意整理(裁判外手続)

①交渉によって利息制限法による減額・再計算・分割弁済の手法をとる。
②少額の場合や自己破産をさけたい場合などにとる。
(2) 特定調停

①簡裁の債務整理の調停。調停ゆえあくまで当事者の合意が前提だが、調停前の保全処分(手形の取立禁止)という裁判所の手段がある。
②手形の期日が迫っているときや債権者が公的なところ(調停案に応じてくれやすい)は有効だが、それ以外は任意整理とかわらない。
(3) 小規模個人再生

①裁判所により、3000万円以下の債務をその5分の1(最低100万円最高300万円)を原則3年間で支払うという決定を出してもらう(それ以外は免除)という制度
②将来の収入の安定性がある場合認められ、破産の回避(免責不許可事由あっても可)というメリットがある。一定額支払うのでその支払いの疎明は必要。また、住宅ローンの減額はない。
(4) 自己破産

①財産がある破産の場合は管財人が現価の配当等の手続を行うが、サラ金破産の場合は大半が財産がないので破産手続はすぐ終われる(同時廃止)。破産宣告(同時廃止)後、免責(借金がチャラになること)を目指す。
②最終の手段。破産者のデメリットは世間が思うほどではない。制度の意義(次項)を理解して判断すべきである。
3) サラ金債務の最終解決手段 ー 自己破産とは
 
(1) 裁判所に申立を行い、債務超過、支払不能の場合に破産宣告をうけ(これだけでは借金チャラとならない)、更に引き続き免責決定を得て、借金を返さなくてもよいとなる制度。

①破産宣告時の債務が、免責の対象となる。
②次のものは免責の対象とならない。
・租税
・悪意の不法行為による損害賠償
・罰金、科料等
・故意に債権者名簿から落としたもの  etc
③次のような不許可事由がある。
・財産隠匿
・浪費、賭博、射倖行為
・詐術
・報告義務違反
・7年間に免責を得たこと等
④不許可事由があっても免責されるケースがある(按分弁済)
※うまくいくケースは「約束を守る人」「ウソをつかない人」
※この逆のケースは苦労する。
(2) よくある質問

①破産法による不利益とは何か
ーー職業及び資格制限がある。(免責を得れば再び取得可能)
  ・宅地建物取引業及び宅地建物取引主任者
  ・旅行業者及び旅行業務取扱主任者
  ・警備業及び警備員
  ・証券外務員、保険外交員
  ・会社の取締役や監査役
  ・後見人、遺言執行者等
  ・その他職業及び資格制限が法律により定められている。(行政庁の許可や届出が必要とされる職業及び法律に基づく資格により仕事に従事している場合または、他人の金員を扱う職業の従事者は確認のこと)
②公務員は破産すれば役所を辞めなければならないか
ーーやめる必要はない
(民間の場合は一定の場合問題となることもあるが、大抵は仕事をやめなくてよい)
③破産すれば会社や隣近所に知られるのか
ーー官報に掲載されるのみであり、普通は知られない。
④家は出ていかなければならないのか
ーー持ち家の場合は、売却されるが、借家の場合は高級マンション等でない限り、出ていく必要はない。
⑤子どもに影響しないか
ーー破産によって法的に影響することはない。
⑥自己破産申立費用は
ーー実費3万円程度(管財人の入るときは50万円以上)
  弁護士費用が30万円から50万円(およその規準)
3. 免責・任意整理等の解決後の問題
 
(1) 弁護士に依頼すれば一時的には解決する。  しかし、再び、多重債務とならないようにする為にも、多重債務となった原因を探る必要がある。

①一時的な場合
勤務先の倒産、取引先の倒産、解雇、営業不振、本人或いは家族の病気等
②生計の乱れ
見通しの甘さや簡単に借りれるシステム等に誘発されたもの。
家計簿(収支でなく、支出だけで可)をつけることによって回復させる。
ルーズさ(相談の際、宿題を与える)のチェック
③浪費癖、買物依存症、ギャンブル依存症
病気であるか見極める
家族環境の改善
自助グループと共に改善
専門家の治療をうける
(2) 将来へ向けて
 
(1) の原因の克服を
破産者(個人情報の流出)はねらわれていると知って誘いにのらない勇気が必要
(2) 2度目の破産申立ーまず免責は無理である。
※うまくいく人は「原因の把握ができており」「その対処が出来ている」人。
※うまくいかない人は、とにかく一時的に債務超過状態を免れたい一心で、原因があいまいな人、ルーズな人。つまり一時しのぎの人。
※見極め方ー宿題を出す。子どもを見る。弁護士の介入通知後の本人の様子を見る(一時しのぎは介入通知後安心して動かない)。
(3) 多重債務を経験したものへ、新たな貸し付けの強要や、詐欺行為が行われうることを知る。
(相談員は予め、そのアドバイスをする)
4. 多重債務者を狙った詐欺
 
(1) 多重債務者の情報は売られている。
従って、人一倍狙われやすい。
(2) 多重債務者に対する詐欺の基本は、債務が本来はないにもかかわらず債務があるかのように装って、その請求をするもの(本来、債務がないのだが、多重債務の状態につけ込んで、ひょっとしたら未払の債務があったのか、と思わす)。
この種の詐欺には、いくつも手法があり、具体例には枚挙にいとまがない。
(参照・別紙)
(3) 解決策は①うまい話にはのらない②覚えのないものは「無視」する。なぜなら「詐欺師は、次のカモを狙う(ややこしいのには手を出さない)」。
(注)裁判所からの文書だけは放ってはいけない。(放っておくと不利に判決される)その為、裁判所からの文書だけは応ずることである(裁判所からの文書かどうか怪しいときは電話で確認する)。
5. 相談員の心得
 
(1) 「借りたものは返さなければならない」という発想はとりあえず横へ置く。前述のサラ金3悪を念頭に、まず話を聞く。とにかく「聞く」ことが重要である。
(2) 必ず解決方法はあるとアドバイスをする。
「返せる見通しがないので自殺したい」などの切羽詰まって相談に来る人などあろうが、解決方法があることを示す。いかに深刻であっても相談に来ている以上は「救い」を求めている。一番、深刻な借金自殺だけはならないよう注意する。
(3) プライバシーに配慮する
事情を聞く前提として当然のことである(この苦情も耳にする)
(4) 債務者の債務状況リストの作成指導を行う。いずれにせよ必要である為。
(5) 債務者の生活状況(家計収支表)の把握につとめる。原因の分析と共に必要である。又、債権者の性格を見極める。
(6) その結果から債務者本人が生活の立直しのためにこれからどういう手続をとれば良いのか、弁護士の利用も含めて利用できる援助制度、その他の情報提供、指針の提示等を行う。
(7) 手段が複数あるときはひとつに決めつけない。
「わからないこと」「難しいこと」はその通り言う。
(8) 解決後のフォロー、前述、詐欺に引っかからないアドバイス等
  <参考>
  〈2005年 自殺者統計〉2005年6月3日 約1年ぶりに更新
  ○ (朝日新聞2005年6月2日記事より)

 昨年1年間に負債や生活苦など「経済・生活問題」が動機の自殺者は7947人に上ったことが2日、警察庁のまとめで分かった。前年より950人減ったが、最近3年は7000人を超え、景気低迷を裏付ける格好になっている。自殺者の総数は前年より2102人減ったものの、3万2325人に上り、7年連続で3万人を超えた。
 動機は、遺書や家族の話などをもとに警察が分類した。
 経済・生活苦による自殺は97年までの約20年間は1000~3000人で推移していたが、経済成長率がマイナスに転じた98年から倒産や失業による自殺が急増し、高い水準で推移。自殺者全体の数を押し上げる結果になっている。
  内訳は負債が4338人で最も多く、生活苦1237人、事業不振912人、失業556人、就職の失敗192人、倒産79人と続いた。
 そのほかの動機は、病苦などの「健康問題」が1万4786人で最も多く、「家庭問題」が2992人、仕事の失敗など「勤務問題」が1772人、「男女問題」が773人、「学校問題」が214人だった。
  人口10万人当たりの自殺者数(自殺率)、前年より1.7人減の25.3人。年齢別では、各年代とも前年より数%ずつ減少。60歳以上の1万994人に続いて、50歳代が7772人、40歳代が5102人、30歳代が4333人、20歳代が3247人となっており、高い年代ほど多かった。小中学生の自殺者は80人(同13人減)、高校生は204人(同21人減)だった。
 自殺者数は、厚生労働省が1日に発表した04年の人口動態統計にも盛り込まれており、死因の6位で3万227人だった。警察庁のまとめより2098人少ないが、統計の取り方が厚労省は日本国籍を有する日本人に限定しているのに対し、警察庁は外国人を含むなど違いがある。
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