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プライバシー・個人情報と人権〜プライバシーとは何か
はじめに
   今日、個人情報は本人の知らないところですでに多数出回っている。
 一方、①権利意識、プライバシー保護の自覚の高まり、②技術の進化による情報取得の容易さ等により個人情報を扱うものは、プライバシー権を意識しないとそのトラブルにまき込まれる。
 他人のプライバシーに接する機会のあるものにとって最悪のケース(多額の損害賠償、信用失遂)にもなりかねない。
1. プライバシーの権利とは
 
(1)  プライバシーの権利は、当初、「ひとりで居させてもらうという権利」(The right to be let alone)と定義。その後、アメリカで発展。
 日本の裁判例で初めてプライバシーの権利を承認した「宴のあと」事件(東京地裁昭和39年9月28日※モデル小説として一般人に未だ知られない事柄を公表された事件)は、プライバシーの権利のことを「私事をみだりに公開されない法的保障ないし権利」とする。
(2)  近時の判例は「プライバシーすなわち『他人に知られたくない私的事柄をみだりに公表されないという利益』については、いわゆる人格権に包摂される一つの権利として、『他人がみだりに個人の私的事柄についての情報を取得することを許さず、また、他人が自己の知っている個人の私的事柄をみだりに第三者へ公表したり、利用することを許さず、もって人格的自律ないし私生活上の平穏を維持するという利益』の一環として、法的保護が与えられる。」とするものが多い。
(3)  一方、学説は「自己に関する情報をコントロールする権利」ととらえる見解(情報プライバシー権説)が有力。「自己に関する情報をコントロールする」というのは、他人(A)から自分(B)が評価されるときの資料となるような情報(Bの思想・収入・学歴・生活様式その他)をどの程度公開するか、あるいは、どのように公開するかについて自分(B)自身で決めるということ。
 この立場では、プライバシーの権利は、自己の情報をみだりに公表されないという自由権的な性格だけでなく、自己の情報に誤りがあれば訂正を求めることができるという請求権的な性格ももつ。
 判例にも少数ながら自己情報コントロール権説をとるものもある。(掲示板プライバシー事件神戸地裁平成11年6月23日※パソコンネット上の掲示板に眼科医の氏名、職業、住所、電話が勝手に公開された事案。住基ネット事件金沢地裁平成17年5月30日判決※住基ネットの違憲性を問うた事案)
(4)  権利性は何人も異存はないが、自己情報コントロール権説をとるかも含めてその範囲については明確でない。
 また憲法上の根拠をもつかどうかについても異論を唱えるものもある(少数)。
2. プライバシーの権利の法的根拠
   法律上「プライバシーの権利」という言葉はない。しかし、これを保障した規定としては、憲法21条2項後段(通信の秘密の保障)、35条(住居侵入、捜索、押収に対する保障)、38条1項(供述強要の禁止)、19条(思想・良心の告白の強制禁止)また、これらの規定にあてはまらない場合でも、憲法13条の「個人の尊厳」あるいは「幸福追求権」が一般的な根拠規定になるとされている(多数説)。
3. 他の概念との違い
 
(1) 個人情報とは
個人情報保護法平成15年5月30日制定。

①「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう(2条)。
②「個人情報取扱業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に揚げる者を除く(略)(2条3項)。
  施行前であるが規制の対象は「個人情報取扱事業者」で企業に対しても各種の義務を負わされる。
(2) 肖像権とは
個人の容貌・姿態をみだりに撮影・公表されない権利
(3) 名誉とは
人の価値に対する社会の評価
4. 侵害の救済方法
 
(1) プライバシー侵害に対して

(1)どのような救済方法があるか 
 プライバシーの侵害に対しては、侵害した者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条・710条、国家賠償法1条1項)。
 さらに、プライバシーが公表される前の段階でも、公表しようとする者に対し、仮処分などの方法によって公表の差止め。
(2) どのような場合に保護されるか(要件)
 裁判例によれば、プライバシーの侵害に対して法的救済が与えられるためには、つぎの(イ)と(ロ)の要件を充たすことが必要とされている。
(イ)公表された事実がつぎの三つの要件すべてを充たすこと

①私生活上の事実またはそれらしく受け取られるおそれのある事柄であること
②もし公表された人の立場に立たされた場合、普通の人なら公表してほしくないと思う、と認められる事柄であること
③一般の人に知られていない事柄であること (ロ)公表によって、公表された人が実際に不快感や不安感を生じたこと
(3) プライバシーの公表が許される場合(違法性阻却事由)
 つぎの場合には、プライバシー権の侵害に基づく損害賠償請求等が認められない。

(イ)公表について被害者の承諾があるとき
(ロ)被害者が公的な人であったり、公表された事実に公共性があるとき
(ハ)正当な理由(開示の目的、必要性、開示行為の態様、被侵害者の不利益の程度など総合考慮)のあるとき
※以上は一般に言われる違法性阻却事由をあげたものであり、判例上明確に要件として固まっているわけではない。
 とはいえ、情報を扱う側としては、承諾と相当性(正当性)を常に念頭におく。
5. プライバシーの権利の今日的課題
 
(1) インターネット社会とプライバシー
 インターネットの情報通信進歩により、プライバシーが侵入、漏洩の危険にさらされ、またいったん侵害されると短期間かつ広範囲に広がる。
(2) 監視社会とプライバシー
 高性能の機器・情報流通により総合的監視が可能になり、無尽蔵にプライバシー侵害の危険がある。
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