(1) |
労働協約とは |
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団交の結果、合意が成立し、書面化されたものをいう。
文書名は自由(「協定」「覚書」等)であるが、両当事者の記名、押印がいる(労組法14条)。
要式性を欠くと、規範的効力(労組法16条)や一時的拘束力(17条、18条)は認められないが、民事上の契約としての効力は認める説が有力である。 |
(2) |
労働協約の規範的効力 |
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① |
労組法16条 労働契約に優位する
労組法92条1項 就業規則にも優位する |
② |
「規範的部分」とは、賃金、労働時間、休暇、人事、解雇、懲戒など。
人事(解雇)協議条項は、規範的部分でないというのが通説・判例(但し、協議条項違反の解雇は手続に不備があるものとして、解雇権濫用にあたるとされうる) |
③ |
団交義務違反に対しては労働委員会の救済機関がある。 |
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(3) |
有利原則 |
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① |
労働協約よりも有利な条件を、労働契約・就業規則で定めうるか、という問題 |
② |
労基法・就業規則は最低条件であるから、それよりも有利な労働契約は有効(労基法13条・93条) |
③ |
労働協約の場合に②同様最低基準であることが明らかなときは、有利原則は肯定されるがそうでないときは否定(通説)。(団結を崩すという考えから) |
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(4) |
労働協約による労働条件の不利益変更 |
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① |
原則は、組合員を拘束する。
団交は長期的なギブアンドテイクの取引ゆえ |
② |
例外(協約自治の限界)
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Ⅰ.既に個人の権利が具体化しているもの(既に発生した賃金債権など)
Ⅱ.一部の組合員をことさら不利益に取扱うことを目的としたもの |
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(5) |
労働協約の債務的効力 |
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① |
契約当事者間の契約としての効力のこと。
労働協約のうち規範的部分に属さない事項は債務的効力のみを有する。
(例)非組合員の範囲、団交ルール、便宜供与等 |
② |
相対的平和義務
協約に規定がなくても、協約の本質や、黙示の合意を根拠に、両当事者は、協約有効期間中はその改廃を求めて争議行為を行わない義務がある。 |
③ |
絶対的平和義務
一切争議行為を行わない義務は、たとえ協約に明確に書いても憲法28条に抵触し無効。 |
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(6) |
労働協約の例 |
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① |
協議、同意条項
協議、同意条項違反を理由に解雇等を無効とする判例は多い。 |
② |
唯一団交約款
逆用されないように上部団体は例外とする条項を入れておくこと。
この約款を理由に別労組の団交は拒否出来ない。 |
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(7) |
労働協約の拡張適用 |
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① |
一定の要件を満たす場合は、組合員でないものにも効力が及ぶ(一般的拘束力。労組法17条・18条)
労組法17条。4分の3以上が協約の適用を受けるとき、他の同種(勤務形態や職務内容)の労働者に及ぶ。 |
② |
不利益な協約の場合
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Ⅰ.非組合員に対して
(学説)拡張否定
(最高裁)原則肯定。例外的に(著しく不利益のとき)否定。
Ⅱ.少数労組に対して
少数組合にも、多数組合と平等に団結権や団交権を保障しているとの理解から、拡張否定が有力 |
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(8) |
労働協約の終了 |
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① |
期間の上限は3年(労組法15条)
期間の定めのない協約は90日前の予告により解約。 |
② |
終了後、新協約が交わされないときの労働条件は従前の協約による労働条件が労働契約の内容として存続(法的構成は学説上対立。合理的意思解釈説、化体説等)
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