第一. |
非正規労働者とは |
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1, |
非正規労働者と正規労働者を区別する特徴的要素(古川景一・川口美貴による) |
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①契約期間
②労働時間
③労務供給の相手方
の3つの要素において、正規労働者との違いのあるグループを、非正規労働者と呼ぶ。 |
2, |
複合型もある。 |
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①ないし③の2つ以上において違いのある場合もある。
例えば、非正規労働者の一つたるパートタイマーは、次項の定義の通り、
前記②において違いのあるものをさすが、社会的実態としては、有期雇用を伴っていることが多い。 |
3, |
非正規労働者は1990年以降増加し、今日では労働者の約3分の1を占める。
非正規労働者は従来から雇用の調整弁の役割であったが、昨秋以降の、派遣切りなどの
労働者の切り捨てとも言うべき問題が改めて浮き彫りになっている。 |
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第二. |
パートタイマーの意義 |
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1, |
パートタイム労働者(短時間労働者)とは、
「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」
呼び名は「パート」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」と何であれ、上記の定義に当たれば、パートタイム労働者である。
パートタイム労働者となれば、後記のパートタイム労働法の適用を受ける。
(労働者であることは違いなく、各種労働法の適用も受ける) |
2, |
いわゆるフルタイム労働者は、このパートタイム労働者に当たらないが、厚労省は、
法の趣旨を考慮すべきとしている(改正パートタイム労働指針)。 |
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第三. |
均等待遇原則 |
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1, |
EUでは、パートとフルタイムの均等扱いは確立した原則。
同一労働に対して、同一待遇(同一賃金)は言わば当たり前といえる。
ところが、日本では、パートとフルタイムの両者の待遇差別を禁ずる明文の禁止規定は無い(労基法3条の「社会的身分」には当たらない)。
そこで、同じ仕事をしながら、パートと言うだけで、正規労働者と待遇(特に賃金)の違うことについては従来から問題であった。
その中で、1993年にパート労働法が制定されるも、正規労働者との均衡は努力義務でしかなかった。 |
2, |
同一労働同一賃金原則をどう考えるか
(1)日本は、EUのように職種別の企業横断的賃金市場が確立されておらず、
年齢・勤続年数・職務・学歴・企業貢献度など多様な賃金決定要素が存することをどう見るか。
(2)学説
①違法説 同一価値労働に対して合理的理由無く賃金差別することは公序違反となる。
②適法説 処遇格差の是正は市場や労使自治に委ねるべき。
③均衡の理念説 年齢・勤続年数・職務・学歴・企業貢献度の違いに基づく格差は
容認しつつ均衡であるべきとする立場。 |
3, |
判例
丸子警報機事件の意義
その中で、パート労働者に対する一定範囲を超える差別は違法であるとの判例がでた。
丸子警報機事件判決は、正社員の8割以下になるときは違法として、その限りで労働者を救済した。
この判例は、様々な課題を残しつつも、明文の差別禁止規定が無い中で、苦心の作と評価されている。 |
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第四. |
パートタイム労働法の概要 |
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1, |
格差社会への批判が高まる中、パート労働法が改正された(2008年4月1日改正)。
パートタイマーを4つのカテゴリーに分け、一定の労働者については、
正規労働者との均等待遇を義務づけた。
正規労働者との均等待遇を義務づけたこの改正は、前進であるが、
その対象たるパート労働者が、極めて限定的であるところが問題である。
4つのカテゴリー
①通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者
②通常の労働者と職務の内容と人材活用の仕組みや運用などが同じパート労働者
③通常の労働者と職務の内容が同じパート労働者
④通常の労働者と職務の内容も異なるパート労働者
このカテゴリーによって、それぞれになすべき措置を定めた。
☆厚労省資料参照 |
2, |
パート労働者の雇い入れに対して、労働条件を文書で明示義務
明示義務の内容
①労基法 労働契約の期間、就業場所・従事すべき業務、労働時間・休日・休暇
賃金、解雇事由を含む退職、(ここまでは書面交付が必要)
退職金、賞与等、労働者に負担させる食費等、安全衛生、職業訓練、災害補償
表彰・制裁、休職に関する事項
②パート労働法
①に加えて、昇級、退職手当、賞与のそれぞれの有無の書面交付義務
明示義務違反の効果
10万円以下の過料
明示のない部分は、労使の合理的意思の推認ないし就業規則による
労働者に過大な期待を抱かせる表示には不法行為になる可能性がある |
3, |
賃金・教育訓練・福利厚生について
前記4つのカテゴリーによる対応 |
4, |
パート労働者に関する就業規則
パート労働者の過半数代表の意見聴取(但し、努力義務。パート労働者法7条)
努力義務であるが、合理性判断に影響する。
cf・就業規則による労働条件の不利益変更は労働契約法10条に規定
合理性あれば許される、として下記は判例が考慮要素とあげたもの
①労働者の被る不利益
②使用者側の変更の必要性
③変更後の内容の相当性
④代償措置
⑤労働組合などとの交渉経緯
⑥他の労組・従業員などの対応
⑦社会の一般的状況 |
5, |
正社員への転換
正社員への転換を希望するパート労働者への機会保障の措置を義務づけた。
(パート労働者法12条) |
6, |
時間外労働と年休
☆厚労省の説明資料の通り |
7, |
その他
パート労働者も解雇規制を受ける。
労働契約法16条
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして無効とする」 |
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5. |
有期雇用 |
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(1) |
パートタイマー自体は短時間労働者であり、必ずしも、有期雇用とは限らないが、社会的実態としては有期雇用が多い。
そして、有期雇用を反復継続し、雇い止めによって、雇用調整をしているのが実状である。 |
(2) |
有期労働契約によって雇用されたパートタイマーに対する更新拒絶(雇い止め)については判例法理(※)による。
雇い止めについては、解雇規制の類推適用を認め、不当な雇い止めは無効となる。
☆判例参照
(参考資料)
厚生労働省説明資料
パートタイム労働法改正前後対照法
判例 |
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