大川法律事務所
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えせ同和行為の根絶に向けて
第一. はじめに
 
1, 人権を知る
 
(1) えせ同和につけ込まれない為に、同和問題、人権に理解を示すことが、必要。
(2) 人権とは
  人が、人であると言うだけで生まれながらにして持っている権利。基本的人権とも言う。具体的な「人権」の内容は憲法が規定する。憲法の表現は抽象的であり、社会の進展と共に「人権」の内容は拡充されていく。
(例)プライバシー権は憲法の文言にはないが憲法13条「幸福追求権」を根拠とすることに今日では間違いなくしかもその外延は広がっている。
2, 差別と平等権
 
(1) 現代においては、多くの国で憲法などにより人権の保障と平等が謳われている。そして平等権の保障の為に、より直接的に差別をした者を処罰する法令を持つ国もある。
(2) 日本国憲法では、憲法14条1項において「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定している。
 本人の力でどうしようも無いことに対して、いわれ無き差別をするのは許されない。
 この規定を受けて戦前には認められていなかった女性参政権が認められ、また男女雇用機会均等法などの法令が制定されている。
 問題は救済方法である。現行法令上は、損害賠償しかない。
(3) 2002年3月には人権擁護法案が国会に提出された。
 規約人権委員会も要請している。しかし現実には廃案になった。
 2009年8月の3党連立政権樹立により、今、再び注目を浴びている。
(4) 反対派の意見に、規制法が「かえって差別を固定する結果を招き適切でない」との意見もあるが現実的でない。
 規制立法が差別を固定するというのは何ら根拠が無く、依然として差別は存在しており、いまだ対応が十分とはいえないのが現状である。
3, 同和問題とは
 
(1) 部落問題は、日本における差別問題のひとつである。被差別身分化の理由には、様々な説がある。現代では世系差別と地域に対する差別を同和問題という。
(2) 1969年以降の同和対策事業により、ひどい環境などは改善されたが、逆に差別が見えにくなっている。しかしその分、結婚差別、就職差別など見えにくいが深刻な差別が残っている。
第二. 民事介入暴力(民暴)
   
 
1, 民暴とは

「暴力団」の威力を背景に、民事上の権利者・関係者の形をとって、介入・関与して、違法・不当な利益の獲得をはかるもの。えせ同和行為もこの一種。
2, 民暴対策

今日では、警察・弁護士会・暴力追放運動推進センターの連携が構築されており、この連携によって対応するのがベストである。
3, 具体的行為への対策
 
(1) 民暴を知る。
 ①敵を知る。
 ②コンプライアンス(弱みを作らない)
(2) 毅然と対応する。
 ①組織的対応(事前の体制の構築)
 ②複数対応
 ③沈着冷静
 ④約束はしない
 ⑤証拠を残す
(3) 警察・弁護士会などに直ちに連絡を取る。【参照】法務省指針
第三. えせ同和行為
 
1, えせ同和行為とは
   えせ同和行為は、「同和」「部落関係」を名乗る個人あるいは団体が、世間の「部落問題はこわい、面倒だ、できれば避けたい」という意識を利用して、行政、企業団体や個人に対し、同和問題への取り組みなどを口実として、公共事業等への不正な参画要求、賛助・献金、書籍購入などの要求、企業・行政機関等の業務に差別問題を当てつけて抗議を行い示談金名下に損害賠償請求をするなどの、不当要求をする行為のことである。
 かつては「えせ同和団体」を問題にしていたこともあるが、今日では、行為者の属性を問わず、「行為」そのものが問題であるとしてこのように呼ばれる。
2, 何故問題となるか
 
(1) えせ同和行為とは、要するに、「同和はこわい」という意識を逆用して利益を引き出す恐喝(犯罪行為)である。
 この「同和はこわい」の考え方は、部落差別に基づく偏見、同和問題に対する知識不足や無理解、「いきすぎた」糾弾行為等が生み出していったと思われる。
(2) 問題は、違法に利益を要求する違法・不当行為は多々あるが、えせ同和行為は、単に、違法・不当行為が行われたことの問題だけでなく、本来解消すべき部落差別を拡大しかねないところにより大きな問題がある。 
 即ち、えせ同和行為の横行は、部落全般への偏見を助長し、部落問題の解決への道を妨げる原因にもなる。この点が、単なる恐喝行為と異なる。
(3) 糾弾について
 糾弾の「行き過ぎ」が、「過剰に」伝わり、それが「増幅」させて、新たな予断を生んだ面がある。
 しかし、例えば労働事件において、違法な「団交」があったからといって、団交権そのものが違法ではないのと同様、糾弾そのものについては冷静にその意味を把握する必要がある。即ち、糾弾であるとして頭から否定するのな間違っている。
3, えせ同和行為の態様と法規制
   現実には、えせ同和行為は刑法における「強要」「恐喝」のほか、態様によっては「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)」違反や、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)」違反に問われ、処罰の対象となる。
4, えせ同和行為の具体的な手口
 
(1) 図書売りつけ(売りつけの方法として、下記①②の方法)
①難癖ケース
 実際に報告されている「えせ同和行為」の手口としては、「同和問題に対する取り組みが足りない」などの難癖をつけて、高額な図書(同和文献)や機関紙の購入、機関紙 への名刺広告の出稿、同和問題勉強会への会費や協賛費の支出を迫る。
②協力ケース
 同和運動への協力を求めるケース。
 書物は、全くいい加減な書物から、例えば「部落差別人権問題事典」まで。
(2) 賛助金要求
 同和運動の理解を口実に、運動団体への賛助金を求めるケース。
(3) 「差別」事件仮構ケース
 一方的に「差別を受けた」「これは差別問題だ」と言いがかりをつけ、「誠意を見せろ」と示談金を要求する。
 同和団体の関係をほのめかし、「××社をこの工事に参加させろ」などの利益誘導を要求する。
 入社時の履歴書の「本籍」記載をもとに何が起こっても「差別」と主張する。
5, 被害者の対応
  ①脅されて恐怖による場合
②差別解消への協力との勘違い
③わずかだけのつきあい、など色々。
6, 対策
 
(1) 事前の対策
 前述の民暴対策と同じ。加えて、真に同和問題を理解しておくこと。
 (知識を深める努力は必要であるが、「知識」と「理解」は別であり、この区別を認識しておくことも重要である)
(2) 抗議が会ったときの判別
 真面目に同和問題に取り組んでいる団体からも、差別的言動があった事の 告発などを元に「これは差別ではないか」、「同和問題解決に対する努力を」 などの抗議が来ることはあり得るが、これらの抗議と「えせ同和行為」はあ る点で明確に区別される。
 不当な要求や利益誘導につながるかどうか、である。
(3) 不当要求である場合(えせ同和の場合)
 もしも不当な要求があった場合、「恐喝」という犯罪行為にあたるので、要求には絶対に応じず、法務局や警察に通報するなどの対処を取ることが望 ましい。その際、要求内容を録音、映像などで記録しておけば証拠になる。
第四. 弁護士会の民暴への取り組み
 
1, 数多くの研修・実務的対応研修
2, 市民からの民暴相談への対応。
3, 各種機関への連携、バックアップなど。
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