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冤罪を生み出さないために  ~ないな、可視化しかないな
第1 はじめに~今も続く冤罪事件
 
1. 冤罪は最大の人権侵害
2. 近時の例
  ①足利事件 再審無罪確定
 強引な取調べによって虚偽自白に追い込まれ、無期懲役の判決を受けて17年半もの間、勾留、受刑を強いられたが、DNA型鑑定の結果無罪であることが明らかになった足利幼女殺害事件
②志布志事件 約3年半の間に審理回数54回 無罪確定
 被告人12名への無罪判決の中で「警察による押し付けや誘導のような、追及的・強圧的な取調べがあったことが強く疑われ、自白の信用性は認められない」と指摘された鹿児島選挙違反事件
③氷見事件 再審無罪確定
 逮捕当初は否認したものの、強圧的な取調べで虚偽自白がなされた結果実刑判決が確定したが、服役後に真犯人が現れたことで元被告人の無実が明らかになった富山県下での誤認逮捕事件
④村木元局長事件 大阪地裁 無罪確定
 郵便割引制度をめぐる偽証明書発覚事件で、大阪地検特捜部は、政治家がらみの事件と絵を画いてそれに合うように強引な捜査。元局長の部下には「虚偽自白」をさせ(後に否認)、元局長には検事が証拠のフロッピーを改ざんするという前代未聞の事件まで発覚した。
⑤布川事件 再審無罪確定
 1967年発生の殺人事件であり、冤罪の両被告人は29年間身体拘束された。両名は捜査官の「自白強要」と、証拠のねつ造で「有罪」とされた。この事件では、取調の一部録音が開示されたが、「一部」ではかえって危険であることを物語っている。
第2 冤罪は何故生ずるか~決して偶然に生じたのではない
 
1. 刑事手続きの流れ
  ☆別表資料の通り
2. 刑事裁判の大原則
  ①無罪推定の原則
②有罪の確信がなければ無罪!
③法廷の証拠のみで判断!
④自分の意思でした自白だけが証拠!
⑤ウソの自白は簡単に見分けられない!
3. 冤罪の原因
  この様な、最大の人権侵害たる冤罪がなぜ起きるのか。
 ①捜査機関の姿勢・予断捜査・自白偏重の意識・権利の軽視
 ②人質司法と代用監獄
 ③密室での取調
 ④権利の形骸化
 ⑤令状裁判官・弁護人・マスコミ・地域社会・市民等チェック機関の形骸化
4. 人は何故「虚偽自白」するのか
   冤罪を生み出す状況の中で、①絶望感②目の前の苦痛から逃れようとする③一旦「虚偽自白」すると演じてしまう方が「楽」になる④ 無実である故に刑罰を受けることは「現実感」を持たない。
第3 冤罪を無くすために~特に、可視化が重要
 
1. 前項の裏返し
   ①捜査における人権尊重の徹底
 ②人質司法の運用禁止と代用獄の撤廃
 ③取調の可視化
 ④権利の実質化
 ⑤チェック機関の強化・誤判責任の追及
2. 可視化について
 

(1)被疑者の取調べは「密室」
 捜査段階における被疑者の取調べは、弁護士の立会いを排除し、外部からの連絡を遮断されたいわゆる「密室」。捜査官が供述者を威圧したり、利益誘導したりといった違法・不当な取調べが行われることがある。その結果、供述者が意に反する供述を強いられたり、供述と食い違う調書が作成され、その精神や健康を害される。

(2)「裁判の長期化」や「冤罪」の原因
 公判において、供述者が「脅されて調書に署名させられた」、「言ってもいないことを調書に書かれた」と主張しても、取調べ状況を客観的に証明する手段に乏しい。弁護人・検察官双方の主張が不毛な水掛け論。裁判の長期化や冤罪の深刻な原因となる。

(3)取調べの全過程の録画(可視化)
 取調室の中で何が行われたのかについて、はっきりした分かりやすい証拠。取調べの最初から最後まで (取調べの全過程) を録画(可視化)しておけばよい。録画したものを再生すれば容易に適正な判定を下すことができる。

(4)裁判員制度成功のためにも取調べの可視化が必要
 取調べの可視化(取調べの全過程の録画)なく、裁判員となった多くの市民が、これまでと同様の不毛な水掛け論に延々と付き合うことは不可能。取調べの全過程の録画により、取調べの様子を事後に検証することが容易になり、裁判員も判断しやすくなる。

(5)欧米諸国、韓国、香港、台湾などでも導入
 イギリスやアメリカのかなりの州のほか、オーストラリア、韓国、香港、台湾などでも、取調べの録画や録音を義務付ける。

(6)国連の国際人権(自由権)規約委員会
 日本における被疑者取調べ制度の問題点を特に指摘し、被疑者への取調べが厳格に監視され、電気的手段により記録されるよう勧告。

(7)検察庁や警察庁での一部録画の試行について
①検察庁による取調べの一部録画・録音
 従来、検察庁は、取調べの録画・録音は取調べの機能を阻害するなどとして、これを極めて否定的。その検察庁も、裁判員裁判で充実した迅速な裁判を実現するためには、そのような試行が必要不可欠であると判断し、2006年5月、「裁判員裁判対象事件に関し、立証責任を有する検察官の判断と責任において、任意性の効果的・効率的な立証のため必要性が認められる事件について、取調べの機能を損なわない範囲内で、検察官による被疑者の取調べのうち相当と認められる部分の録音・録画を行うことについて、試行することとした」と発表(現在検察庁は、全国の地方検察庁で、原則として自白調書を証拠請求する裁判員裁判対象事件の全件で、取調べの一部録画・録音)。

②警察庁による取調べの一部録画・録音の試行
 検察庁の試行の影響も受けて、警察庁は2008年9月から警視庁、大阪府警、神奈川県警、埼玉県警、千葉県警など、大規模警察本部の警察署において、取調べの一部を録画・録音する試行。この試行も裁判員裁判対象事件の中から警察官の裁量によって、警察官による取調べの一部を録画・録音するというもの。

③取調べの可視化の意義と一部録画・録音の問題点
 取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の本来の意義は、捜査過程を透明化し、違法・不当な取調べを著しく減少させて取調べの適正化をもたらし、取調べの状況を直接に客観化し、自白の任意性立証を容易にする。
 現在検察庁や警察庁が実施している、取調べの一部のみ録画・録音するだけでは、かえって、取調べの捜査側に都合の良い部分だけが録画・録音されかねない。

(8)現在の状況
①検察庁が部分的に全面録画の施行
②「検察のあり方会議」提言
③「新時代の刑事司法制度特別会議」発足へ(現在進行中)

第4 裁判員制度をどう見るか~良くも悪くも「市民」の役割が重要
 
1. 施行後2年
 

良い影響もある
有罪率、身体拘束率の(わずかな)低下。
慎重な起訴

2. 一方で問題も
 

 ①市民の負担
 ②拙速の危険
 ③量刑のゆらぎ
 ④控訴審の役割

第5 裁判員に選ばれたら~市民感覚を生かそう
 
1. あなたが裁判員になったとき
  (1)まず市民参加の意義を知ろう
  ①市民の感覚を裁判に反映させる(法の文言も、市民に理解しやすくする)。
   市民の感覚で、結果もプロセスも、理解できるもので無ければならない。
  ②法律的知識は必要はない(普通の市民は知らない。裁判官が説明する)。
  ③「人の運命を左右するような事は出来ない」と思わないこと
   (難しいことが期待されているわけではない)
(2)刑事裁判の原則を知ろう(前述の通り)
(3)そして、自分の思うままに(無論、真面目に)取り組もう
  ①「最高裁判所・法務省・日本弁護士連合会」作成の「裁判員制度」のパンフレットの
   うたい文句は「私の視点、私の感覚、私の言葉で参加します」 
  ②よくわからなかったら「無罪」と言おう。
    何故なら「疑わしきは被告人の利益に」。
   量刑もよくわからなかったら「軽い方」にしよう。
    何故なら「疑わしきは被告人の利益に」。
  ③わからなくても気にしない。
    意見を変えるのも自由。
2. 裁判員に選ばれたらどうしようと、悩めるあなたこそ是非裁判員に。
   悩めるあなたのその感性をぶつけよう。
  →冤罪を生み出さない。このことが何よりも重要。
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