大川法律事務所
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戸籍と差別
1. 戸籍とは
 
(1) 戸籍とは
   個人の身分関係を明確にするための文書。戸籍法には、戸籍の記載事項など詳細に規定されているが、「戸籍とは何か」との定義はないし、法の「目的」規定もない。
(2) 世界に冠たる制度(法務省の常套句)
(3) 実際の家族ではなく、法律上の家族の記録。家族単位で身分事項(出生、結婚、死亡など)が記載され、さかのぼって追いかけることが出来る。
2. 戸籍の歴史
 
(1) 明治5年戸籍(別名壬申戸籍)(明治5年2月1日から明治19年10月15日)
  ・日本で最初の全国統一様式の戸籍
・戸籍の編成単位は「戸」(「家」のこと)
・身分登録・住所登録の意味があった
  壬申戸籍では、皇族、華族、士族、卒、地士、僧、旧神官、尼、平民を別個に集計した。旧来の被差別部落民は平民に含められたが、多くの役所では彼らの戸籍に様々な注記や目印を付けて区別した。後の戸籍が改めてからも、他人が被差別部落民かどうかを探り出すために壬申戸籍を用いる者が後を絶たなかったため、1968年(昭和43年)に閲覧が禁止された。
(2) 明治31年式戸籍(明治31年7月16日から大正3年12月31日)
  ・新たに「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」の欄が設けられる。(完全に番地制となる)
・民法(旧民法)で、「家制度」が制定され、人の身分関係に関しても詳細な規定が設けられる
(3) 大正4年式戸籍(大正4年1月1日から昭和22年12月31日)
  但し、昭和23年1月1日以降直ちに新様式に改正することができなかった為、改正戸籍は昭和33年4月1日以降になる。
(4) 昭和23年式戸籍=現在の戸籍(昭和23年1月1日~現在)この戸籍に改製される前の戸籍が「改製原戸籍」
  ・昭和22年の民法改正で「家制度」が廃止される
・戸籍編成が夫婦単位となり戸籍の様式も変更
・家の単位から夫婦親子の単位に変更
(5) 平成6年式戸籍  戸籍事務の電算化が始まり、コンピュータで戸籍を管理する自治体が徐々に増える。
  平成6年に戸籍法が改正され、戸籍をコンピュータ処理できるようになった。
3. 戸籍と住民票の違い
 
(1) 戸籍とは身分関係を示すもの
(2) 住民票とは居住地関係を示すもの
  戸籍
住民票
登録地
本籍
住所
代表
筆頭者
世帯主
登録の基礎
身分関係
居住関係
登録の単位
家族
世帯
準拠法
戸籍法
住民基本台帳法
主管
法務大臣
市区町村長(総務大臣)
事務の種別
法定受託事務
固有事務

(佐藤文明 「戸籍と差別」(解放出版社)より)
4. 戸籍の必要性~外国の場合
 
(1) 諸外国にはない
  (台湾くらいといわれている)
(2) 2008年度から韓国では「戸籍制度」が廃止され、新たに「家族関係登録制度」が施行された。
(3) 諸外国で不便とは聞かない
(4) 管理する側にとっては便利な制度
5. 戸籍による差別の実態
 
(1) 戸籍に記載された個人の年齢、氏名、出生・死亡年月日、その場所、身分行為(婚姻、離婚、死亡による婚姻解消、婚姻関係の終了、養子縁組、離縁、婚姻・離婚などの取消と無効、認知)、未成年者の親権者・後見人、親権の喪失、推定相続人の廃除などが分かる。
(2) 個人の出生から死亡に至るまでの身分関係の変動が逐一、系譜的に記録されているため、これが公開されると本人のみならず、家族のプライバシーまで分かることなる。
   離婚歴・婚外子・養子などの事実が明らかにされ、また入籍する前の戸籍を順次たどることによって、被差別部落の出身であることを確認することも出来た。
(3) 無論、「差別」自体が問題なものであるが、戸籍が差別を助長する。
(4) 結婚差別
(5) 就職差別
6. 戸籍と個人情報保護法
 
(1) 公開の原則の成立とその制限
  ①公開の原則
②その弊害と様々な事件
③制限への動き
(2) 1976年の法改正と問題点
  ①法改正とは
②その問題点
(3) 個人情報保護法の視点
個人情報保護法とは
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、高度情報通信社会の進展にともない個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱に関する基本理念等を定めるとともに、個人情報取扱事業者の遵守すべき法的義務を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としたもの(1条)。
しかしながら同法には、センシティブ情報保護規定がなく、不十分さは見られない。
センシティブ情報とは、情報の種類、性質に照らし、不当な差別等に結びつく可能性が高いことから、情報の収集、利用、提供が原則として禁止される情報。一般的にセンシティブ情報に当たるものとしては、①人種及び民族、②門地及び本籍地(所在都道府県に関する情報を除く)、③信教(宗教、思想及び信条)、政治的見解及び労働組合への加盟、④保健医療及び性生活などがあげられる(経産省ガイドラインの例)
   
   
7. 非嫡出子差別事件
 
(1) 結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定が、法の下の平等を保障した憲法に違反するかが争われた2件の家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博(ひろ)允(のぶ)長官)は4日、規定を「違憲」とする初判断を示した。14裁判官全員一致の結論。
また、すでに決着済の同種事案には「この違憲判断は影響を及ぼさない」と異例の言及を行った。
(2) 明治時代から続く同規定をめぐっては大法廷が平成7年に「合憲」と判断、小法廷も踏襲してきた。
(3) 大法廷判決の内容
   当裁判所は、平成7年大法廷決定以来、結論としては本件規定を合憲とする判断を示してきたものであるが、平成7年大法廷決定において既に、嫡出でない子の立場を重視すべきであるとして5名の裁判官が反対意見を述べたほかに、婚姻、親子ないし家族形態とこれに対する国民の意識の変化、更には国際的環境の変化を指摘して、昭和22年民法改正当時の合理性が失われつつあるとの補足意見が述べられ、その後の小法廷判決及び小法廷決定においても、同旨の個別意見が繰り返し述べられてきた。
 昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
 以上を総合すれば、遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。
8. 本人通知制度
 
(1) その内容と意義
(2) 日弁連の意見
(3) 問題点
  以上
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